転倒は誰にでも起こりうる日常的な出来事ですが、特に高齢者にとっては転倒による骨折が、その後の生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。加齢に伴い骨密度は低下し、骨折リスクが高まるためです。骨折は身体的な苦痛だけでなく、動けなくなることによる精神的なストレス、今までできていたことができなくなることによる自尊心や自己肯定感の低下など、様々な苦痛を伴います。そして、これらの苦痛は、高齢者の社会的な孤立を招き、生活の質を著しく低下させてしまう可能性も孕んでいます。
骨折による入院や自宅療養は、高齢者の生活を一変させます。入院中は慣れない環境によるストレスや生活リズムの乱れ、筋力や体力の低下など、社会復帰を困難にする要因が多く存在します。自宅療養の場合でも、家事や身の回りのことができなくなることで、家族や介護者に大きな負担がかかってしまうでしょう。さらに、骨折をきっかけに外出や社会参加の機会が減れば、社会的なつながりが希薄になり、孤立を深める可能性も懸念されます。
転倒による骨折は、高齢者の身体的、精神的、社会的な側面全てに影響を及ぼし、人生を大きく変えてしまう可能性があります。高齢者が健康で自立した生活を送るためには、転倒による骨折のリスクを認識し、予防に努めることが重要です。日頃から運動習慣を身につけバランス感覚を養う、自宅内の環境を整理整頓し転倒しやすい場所を改善するなど、高齢者自身だけでなく家族や介護士、周囲も協力し、高齢者が安全に安心して暮らせる環境作りを目指していく必要があるでしょう。